映画館のような大画面を、自宅のリビングでスマートに体験できる「超短焦点プロジェクター」。近年は4K化や高輝度化が進み、テレビの代わりとして注目を集めています。
そしていま、新しい世代の光源として登場したのが 「3色レーザー(RGBレーザー)」 です。従来のレーザー光源やランプ式に比べ、格段に広い色域と鮮やかな発色を実現し、まさに“次世代の映像体験”と呼ぶにふさわしい進化を遂げています。
今回紹介するのは、3色レーザーのスペシャリストであるJMGOが手がける超短焦点プロジェクター「O2S Ultra 4K」です。
・4K・3色レーザー・コントラスト比4000:1の圧倒的映像
・壁から15cmで100インチの大画面
・AIにより進化した画像補正
・高級ブランドDYNAUDIO社製のスピーカーを搭載
・最新のGoogleTV5.0で快適にコンテンツを楽しめる
従来と比べ、明るさとコントラストが向上した映像は、ネクストレベルに到達した感覚を受けました。

後述のALRタイプのスクリーンと組み合わせることで明るい部屋でも使用可能で、これは従来のプロジェクターの概念を覆します。
「リビングでテレビに代わる存在になり得るのか?」という問いには、「Yes」と即答できる素晴らしい製品だと思います。どこよりも詳細にレビューしていきますので、ぜひプロジェクター選びの参考にしてください。

公式サイト

本体と付属品を確認
外箱はキャリーバックとしても使用可能。

ボディーはプラスチックを基本とし、側面のスピーカー口はメタルの構造。美しい曲線のデザインは先鋭的で、とてもかっこいいです。


背面には接続端子。HDMIが2つある点と、有線LAN対応が嬉しいポイントです。

上面には電源ボタンとレンズ、画面調整用の1080Pカメラが2つあります。

底面には天吊り用のネジ穴が4つあります。

また、フロントフット×2はネジ式になっていて、水平の調整が可能です。

MALC3.0ではレーザーモジュールが小型化したため、明るいのに本体はコンパクト。重さ4.5kgで移動は簡単です。


付属品は以下の通り。
ACアダプター、リモコン、USB-CtoCケーブル、クリーニングクロス、説明書

リモコンはUSB-C給電のバッテリー式になり、乾電池の交換が不要になりました。ボタン配置も一新され、暗闇でボタンが光るようになったのも嬉しいです。


本体をセッティング/起動
超単焦点モデルは短い距離で大画面を投影できますが、設置に際しての注意点や、知っておきたいポイントがいくつかあります。
超短焦点トップクラスの投射比

O2S Ultra 4Kの投射比は0.16:1。これは超短焦点プロジェクターの中でもトップクラスの数値で、本体背面から壁まで約15cmで100インチの映像大画面を投影します。計算上は、約3.5cm壁から遠ざけるごとに、画面サイズが10インチ大きくなります。
投影場所はスクリーン or 壁【平面性が重要】
超短焦点プロジェクターは画面の凹凸に敏感なので、スクリーンを用意する場合はフレーム固定式スクリーンやテンション付き電動スクリーンなど、たわみが発生しにくいものを用意する必要があります。実際の投影映像は下記の通りで、スクリーンは必ず「超短焦点対応」が明記されているものを選びましょう。

→✖️縁が歪む

→◯歪みなし
最高の画質を得るためにはスクリーンがベストですが、壁投影でも映像を楽しむことは可能です。縁の歪みを微調整するフレームエッジアライメント機能や、壁色に応じた壁色補正機能など、優秀な画面補正機能が調整の役に立ちます。


・自動台形補正
・オートフォーカス
・自動スクリーンフィト
・デジタルズーム
・明るさ自動調整
・フレームエッジアライメント
・壁色適応機能
壁投影の映像もこのように十分綺麗です。

ただし、壁紙の凹凸は映像に載ってしまうため、映像の精細感はやはりスクリーンに劣ります。

予算が許すならスクリーン推奨です。本機はハイエンド機なので、最高の画質を引き出せないのは少し勿体無い。
なお、明るい部屋でも使用したい場合は、ALRタイプの超短焦点スクリーンを推奨します。こちらは外光を吸収しつつ、下方向からのプロジェクター光を効率的に視聴者へ反射します。

超短焦点用ALRは、通常のALRより外光に対する耐性が強いです。そのスクリーンに、最高クラスの輝度を持つ本機を組み合わせることで、昼でも高い視認性を実現できます。
実際に今回のレビューでは以下のVIVID STORMのALRスクリーンを使用。https://jmgo.jp/products/jmgo-n1s-ultra-4k-vividstorm
50インチのテレビと、100インチ(ALR使用)の映像比較が下記。


超短焦点用ALRと組み合わせれば、昼カーテン全開でも実用的なレベルで映像が視認できます。これはプロジェクターの常識から考えると、凄まじいことです。もちろん、夜間の映像は圧倒的な迫力です。
O2S Ultra 4KとALRスクリーンの最強タッグは、「テレビとの置き換え」に最もおすすめの組み合わせです。
画質の確認
O2S Ultra 4Kでは新たな光学エンジンであるMALC3.0を搭載。従来より高効率のため、小型で明るく、放熱/冷却性も向上しています。

LSRのランダム振動により、3色レーザーの課題であるスペックルノイズを大幅に低減。業界水準を大きく上回る97%以上のノイズ除去に成功しており、安定性が抜群です。実際、2週間ほど使用していますが、ノイズが気になるようなことはありませんでした。

当然ながら、基盤となる光学エンジンの進化により映像の美しさも向上しています。以下で実際の画質を確認していきましょう。
3650ISOルーメンで最強クラスの明るさ

実際に100インチで白画面を投影した際の画面中心の輝度を測定してみました。また、100インチの実測値をもとに80インチと120インチの理論上の輝度の計算を行いました。
測定条件
画面サイズ:100インチ、環境:暗室、設定:映画モード(暖色)、ホワイトスクリーン(ゲイン1.0)、ソフト:Calman Studio、測定器:Display PLus HL
備考:設定やスクリーンの種類で輝度は変わるので、あくまで参考としてご覧ください。
明るさ設定 | 画面輝度 @80インチ (計算値) | 画面輝度 @100インチ (実測値) | 画面輝度 @120インチ (計算値) |
---|---|---|---|
10 | 270nit | 173nit | 121nit |
9 | 223nit | 143nit | 99nit |
8 | 204nit | 131nit | 91nit |
7 | 188nit | 121nit | 84nit |
6 | 176nit | 113nit | 78nit |
5 | 158nit | 101nit | 70nit |
4 | 140nit | 90nit | 62nit |
3 | 123nit | 79nit | 55nit |
2 | 107nit | 68nit | 47nit |
1 | 89nit | 57nit | 40nit |
DCIのシネマ規格では、
映画館の一般上映 → 48nit
映画館のDolby Cinema上映 → 108nit
と基準が定められています。よって、暗室で映像を見る場合は48〜108nit程の設定が理想ですが、OS2 Ultra 4Kは映画館並みの明るさを余裕を持って実現できています。暗室では画面サイズに合わせて適度に輝度を落とし、昼は明るさ最大にして使うのがおすすめです。
コントラストは圧巻の4000:1
MALC2.0世代の製品はコントラスト比1600:1で、これでも十分良かったのですが、MALC3.0の本機は4000:1と更に凄いスペックに。実際に映画モードでコントラスト比を測定したところ、実測値は3950:1となりました。

コントラスト比はスペックと実測値が乖離している場合もありますが、本機はほぼスペック通りの性能が実用設定でも出ているようです。
明るいハイライトと締まった黒で、映像は迫力があります。高いダイナミックレンジが求められるHDRの映像も、臨場感たっぷりに楽しむことができますよ。
AISRで低画質の映像も綺麗に映す
AISR(AI解像度補正機能)では、低解像度コンテンツをスマートに解析し、ノイズの除去と映像の鮮明度を向上させます。私は未だにGEOやTSUTAYAでDVDやBlue-rayを借りることがあるので、この機能は嬉しい。

あくまでAI解析による補正なのでネイティブの4K映像には及びませんが、確実に活用したい機能です。
3色レーザーはあらゆる色域をカバーする
赤・青・緑の3色レーザーは純粋な光源であるため、その組み合わせであらゆる色を再現が可能です。映像コンテンツ用の色域規格を自在に調整し、オールドシネマから最新のHDRシネマまで完璧に対応をします。
Q.色域規格とは?
プロジェクターの色域とは、表示可能な色の範囲を示す指標です。色域が広いほど鮮やかで豊かな色表現が可能になり、映像の正確性や美しさに影響を与えます。
色域には様々な規格があり、コンテンツ毎に使い分けられています。

色域 | 特徴 |
---|---|
sRGB/Rec.709 | 一般的なディスプレイ、テレビ、ウェブ標準、youtube(非HDR)、Blu-ray |
DCI-P3 | 映画、HDR映像、4K UHD Blu-ray、Youtube(HDR) |
BT.2020 | 自然界の色の99.9%を再現。実際のHDR映画はBT.2020の枠組み内にP3で格納されている場合が多く、その色域はフル活用されていないのが現状。 |
色域の広さは光源で決まります。ランプやLEDの格安機は、Rec709もカバーできない場合が多く、ハイスペック機でもP3未満がほぼ限界です。一方で3色レーザーのO2S Ultra 4KはBT.2020 110% Overの色域を持ち、自在に範囲の調整が可能。
以下は各色域を指定したときの色域の実測値で、各規格にかなり正確に対応しています。
※100インチ、映画モード(暖色)、Calman Studio、i1 Pro2で測定。スクリーンの種類や設定で測定結果は変わるのでご参考までに。
Rec.709

DCI-P3

BT.2020

色域の設定を「自動」にしておけば入力データに合わせて色域を選んでくれます。

また、色域規格は任意指定も可能で、例えばRec.709でマスタリングされた映像を、広色域のBT2020の鮮やかな色で見ることも可能。古いアニメをBT.2020の色彩で見ると、リマスターされたようで面白いですよ。

Dolby Vision対応!最新規格の映像体験ができる

Dolby Visionは、明るさや色の情報量が多くよりリアルで美しい映像を再現できる方式です。潰れがちな暗部や飛びやすいハイライトも自然に描写され、階調表現と色の深みが大幅に向上。さらにDolbyの厳しい認証をクリアしているため、映像制作者の意図を忠実に再現できる「高画質の保証」が得られる点が最大の魅力です。
公式サイト

映像以外も注目ポイント多数
DYNAUDIO社の高音質スピーカー搭載
超短焦点の大きなメリットが音響です。
通常のプロジェクターは後方に配置する場合が多いので、「映像は前方から」「音は後方から」というチグハグな状況になりがちです。しかし超短焦点プロジェクターなら、映像も音も前方から自然に届けることができます。

スピーカーは従来のJMGO自社開発のスピーカーではなく、10W×2基のDYNAUDIO社のスピーカーを搭載。従来の製品も十分に高音質でしたが、本機は特に低音の音圧が向上しているのを感じました。音の迫力は内蔵スピーカーとしては最高峰で、別途スピーカーを用意しなくでも十分に映画を楽しめるクオリティーになっています。
また、サウンドのモードも豊富。
サウンドスタイル
標準、音楽、映画、スポーツ
聞き味が結構設定で変わるので、最初に試してみると良いと思います。コンテンツ毎に切り替えるもよしですが、私は「映画」モードがバランスが良いと感じたので基本そちらで使用しています。
ゲームは低遅延で楽しめる
ディスプレイ設定から、「HDMI低遅延モード」項目の設定を行うことで、ゲーム時の入力遅延を低減できます。※「HDMI低遅延モード」には「ゲームデバイス専用」設定と「すべてのデバイスに対応」設定があります。原因は不明ですが、「ゲームデバイス専用」でうまく測定ができなかったため、その結果は割愛します。
また、スーパーフレームレートをONにすることで、120Hzや240Hzの信号に対応し、より低遅延でゲームを遊べます。いつも通り、4K Lagtester を使用して、入力遅延を実測してみました。

入力 | 設定 | 入力遅延 | 台形補正 |
---|---|---|---|
4K/60Hz | 低遅延OFF | 138.3ms | 可 |
4K/60Hz | 低遅延(全てのデバイスに対応) | 34.3ms | 可 |
FHD/120Hz | 低遅延(全てのデバイスに対応) +スーパーフレームレート | 17.9ms | 可 |
FHD/240Hz | 低遅延(全てのデバイスに対応) +スーパーフレームレート | 9.1ms | 可 |
ゲーム性能はかなり優秀。大体のゲームは60Hzの設定でプレイすることになると思いますが、30ms台の実用的な速度が出ています。120Hz及び240Hzの対応も確認できたので、反応速度が求められる対戦ゲームも対応可能です。台形補正をかけても、速度が変わらないのは素晴らしいです。
最新バージョンのGoogle TV5.0を搭載

GoogleTVは対応アプリ数が多く、最も安心ができる内蔵OSです。YouTubeやプライムビデオやTVerなどはもちろん、デバイスの認証が必要なNetflixにもしっかりと対応しています。おすすめ映画の提案やウォッチリスト追加機能など、UIの使いやすさは抜群です。2週間ほどストリーミングサービスを楽しみましたが、動作速度は快適で不満はありませんでした。
最強の超短焦点!予算が許すなら買い

3色レーザーの先駆者であるJMGOが、超単焦点の領域でも先陣を切って最高の製品を作り上げたと思います。
新しい光学エンジンMALC3.0では、特にコントラスト比の進化に驚きました。DLPでネイティブ比4000:1は、1年前は夢みたいな性能だったので、進化の速度にとても驚いています。映像の奥行きや立体感が際立ち、よりリアリティーの高い映像に感じました。

また、ALRスクリーンと組み合わせることで、かなり明るい環境でも映像が見えます。私としては、これまでの常識を覆されたようで、かなり衝撃的でした。テレビとの置き換えを考えている人は、本機+ALRスクリーンがおそらく最強の回答になると思います。
ネックは49万円という価格だと思いますが、4K・超短焦点・最高輝度・3色レーザーと高額な要素が揃ってるので、性能には見合っています。専用室はもちろんのこと、リビングへシアターへの適性はこれ以上ないと思います。
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