みなさんこんにちは、プロジェクターオタクのジェクタです。
今回はEPSONが誇るハイエンド4KプロジェクターLS12000をレビューしていきます。サイズは普通のプロジェクターの3倍くらいありますが、その分映像もすごいです。
・レーザー/2700ルーメンの明るく鮮やかな映像
・トーンが安定した一貫性のある映像
・レーザー調光によるダイナミックな黒表現
・垂直/水平レンズシフト搭載
・実用的なゲーム性能
日本最大のオーディオビジュアルアワード、VGPでは金賞を三年連続受賞している、この価格帯の王者とも呼べる製品です。最近のホームプロジェクターはEPSON意外はDLP方式の製品が多いですが、それらと違った3LCDのメリットやデメリットをしっかりと確認できたので、今回は詳細にレビューしていきたいと思います。
EPSON LS12000のスペック
| 価格※ | 619,800円 ※公式価格。 |
| 光源 | レーザーダイオード |
| 方式 | DLP |
| 明るさ[ISOルーメン] | 3500 |
| コントラスト比 | 2,500,000:1※カラーモードダイナミック、レーザー100%、ズームワイド端 |
| 色域 | スペック記載なし 実測:Rec.709=99%、DCI-P3=84%、BT.2020=62% |
| 解像度 | 4K UHD(3840×2160) ※4K信号を入力し、2軸シフトテクノロジーによって4Kの高画質で表示 |
| 画像モード | HDR10+、HLG |
| 投影距離 | 60インチ:178〜376cm 80インチ:239〜503cm 100インチ:300〜630cm 120インチ:360〜757cm 150インチ:452〜947cm 200インチ:604〜1264cm 300インチ:908〜1889cm |
| 台形補正 | 水平/垂直 手動 |
| レンズシフト | 上下96%、左右47% |
| フォーカス | 手動 |
| スピーカー | 非搭載 |
| 騒音(実測値) | 22db(最小) |
| 端子 | USB-A、HDMI×2(HDCP2.3対応)、RS-232C、トリガーアウト、USB-B |
| Bluetooth | 非対応 |
| WiFi | 非対応 |
| 入力遅延 | スペック記載なし 実測:4K@60Hz=19ms |
| 寸法[mm] | 520mm×447mm×169mm |
| 重さ[kg] | 約12.7kg |
外観と付属品
外観はとにかく大きく貫禄があります。全面にはレンズと、ファンの吸排気口があります。

電源を入れるとレンズカバーが自動で開きます。レーザーなので起動は高速でした。

側面の見た目はこんな感じです。電源ボタンと、映像ソースの切り替えボタンがあります。

背面には簡単な操作ボタンと接続端子があります。HDMIはeARCに対応しています。

背面にはカバーの取り付けが可能です。

上面にはボタン類はなし。

底面には天吊り用のネジ穴とフロントフットがあります。ひっくり返しての撮影は怖かったので、写真は割愛します。
重さは12.7kg。普通のプロジェクターの3倍くらいの大きさがあります。このサイズは適合できる環境が限られますので、必ず配置の計算を行ってから購入してください。ちなみに私の部屋では、120インチのスクリーンにフルサイズで投影するための距離が足りませんでした。

付属品の電源ケーブルとリモコンは以下の通り。

LS12000の画質を確認
ライト強

ライト弱

暗室




明るさは2700ルーメン。ホームプロジェクターとしてはとても明るいので、多少明るい部屋でも大画面を楽しめます。
シネマモードで100インチの画面輝度を測定した結果は以下のとおり。
| レーザー出力 | 画面輝度 |
|---|---|
| 100% | 190nit |
| 90% | 168nit |
| 80% | 147nit |
| 70% | 131nit |
| 60% | 114nit |
| 50% | 95nit |
映画館の通常上映は48nitが基準なので、十分な明るさを持っていることがわかります。
輝度のムラは少なめ


照度計を用いて白画面9ヶ所の輝度を測定し、明るさのムラを確認。私の測定では若干右上側が暗くなるという結果でしたが、平均輝度は95%以上で、全体的には良好でした。
カラーは濃く温かみがある

EPSONのランププロジェクターは、職場や学校などのプレゼンテーションで触れたことがある人が多いと思いますが、PC画面を映した時にとても柔らい感じに見えると思います。その感触はこのLS12000でも同じです。
3LCDらしい明るく暖かいカラーは、見ていてとても心地がいいです。この色の質感には、液晶テレビにはない映画的な味わいがを感じます。
色域はRec.709をカバー!P3は84%
Q.色域とは?
プロジェクターの色域とは、表示可能な色の範囲を示す指標です。色域が広いほど鮮やかで豊かな色表現が可能になり、映像の正確性や美しさに影響を与えます。
色域には規格があり、コンテンツ毎に使い分けられています。

| 色域 | 特徴 |
|---|---|
| sRGB/Rec.709 | 一般的なディスプレイ、テレビ、ウェブ標準、youtube(非HDR)、Blu-ray |
| DCI-P3 | 映画、HDR映像、4K UHD Blu-ray、Youtube(HDR) |
| BT.2020 | 自然界の色の99.9%を再現。実際のHDR映画はBT.2020の枠組み内にP3で格納されている場合が多く、その色域はフル活用されていないのが現状。 |
光源は青レーザー+蛍光体。この方式は、青=青レーザー、赤と緑=青レーザーを使って蛍光体から発生させた黄色い光から分離します。Rec709のカバー率は99%で申し分ありません。一方P3のカバー率は84%にとどまっていて、これは赤と緑を蛍光体から取り出す性質からでしょう。

現在、同価格帯で増えている3色レーザープロジェクターと比べると色域は若干劣りますが、蛍光体はレーザーよりも光が柔らかいので、見た目が優しく見えるというメリットがあります。
コントラスト比はとても優秀
Q.コントラスト比とは?
最も明るい白(ホワイト)と最も暗い黒(ブラック)の輝度の比率を表します。例えば、「2000:1」のコントラスト比なら、白の明るさが黒の明るさの2000倍であることを意味します。
コントラスト比が高いほど、映像の奥行きやメリハリが増し、細かいディテールが見えやすくなります。

映画モードのコントラスト比はネイティブで4467:1となりました。また、シーンに応じたレーザー調光機能をONにした場合、ダイナミック比は17202:1まで向上しました。10万円程度のプロジェクターは1000:1程度が相場なため、高級機ならではの「深い黒」をしっかり実現しています。

HDRはトーンカーブを手動で設定する
HDR10+とHLGに対応。ダイナミックトーンマップの機能は持ちませんが、16段階のスライダーを調節することで、明暗のグラデーションを調整します。

この調整は極端な設定を選ぶと白飛びや黒潰れが目立つため、中間の値を選ぶことになると思います。
実際にHDR映像をみた感想は、トーンに安定感があり見やすい映像でした。シーンの転換が自然なので、目の疲れが少なく長い時間の映画も快適に見れます。

一方、HDRならではの「目を細めたくなるような光の眩しさ」といった表現は控えめ。これはメリットともデメリットとも取れる気がします。
EPSON製品の中でも精細感は最高峰
LS12000はフルHDパネルをベースにしたピクセルシフト方式を採用。
下位モデルのEH-TW7100では比較的シンプルなピクセルシフトに留まりますが、LS12000は上下左右に動かす2軸ピクセルシフトを採用。同じ擬似4Kでも描画密度が高く、細部の輪郭や文字のシャープさに差が出ます。
以下で実際に解像感をテストしてみましょう。
測定方法

中央+4隅でテスト

・レベル1〜10のどのサイズの文字まで潰れずに読めるかを目視で判定。
・解像度により、読み取れる文字サイズの限界があります。
フルHD → 「6」が限界
4K → 「4」が限界
以下は測定結果です。
画面中央

画面右上

スコア(何番まで読み取れるか)
| 左上 | 左下 | 中央 | 右上 | 右下 |
|---|---|---|---|---|
| 5 | 5 | 5 | 6 | 5 |
本機は4Kなので、理論上の限界はスコアは「4」
これまで見てきた3LCD製品の中では、最もシャープに映像が見えました。4Kの限界スコアである「4」には届きませんでしたが、フルHDとの違いは確かに感じました。
映像は調整機能が豊富

映像モードはシネマ、ブライトシネマ、ナチュラル、ビビット、ダイナミックがありますが、個人的にはシネマが一番自然で好みでした。
フレーム補完や、超解像、シーン適正ガンマ補正などのインテリジェンスな処理機能も搭載しています。調整は数値を細かく調整できるためやや玄人向けに感じましたが、好みの絵作りを楽しむことができるでしょう。
映像の総評

カラーが優しくはっきりとした映像はとてもEPSONらしい質感です。液晶テレビや有機ELにはないプロジェクターらしい柔らかさを映像の随所から感じたので、フィルム映画などにマッチするでしょう。
一方、映像のシャープさや、ハイライトの眩しさなど、いわゆる「キレ」に当たる部分は控えめの印象。その分映像には落ち着きがあるので、これはいい悪いではなく好みが分かれるところ。ゲームやアクション映画に疾走感を求める場合はDLP方式の製品の方が向いている気がしますが、腰を据えて深みのある映像を味わいたい人は本機がおすすめです。
レンズシフト搭載はうれしい

垂直、水平方向のレンズシフトと、光学ズーム機能で、画質を劣化させることなく、画面位置の調整が可能です。実際の配置については、EPSONの公式サイトの投影距離シミュレーターで確かめることができます。
本体サイズが大きく、必要な投影距離も長めなので基本的には広い部屋への設置を想定した商品に感じました。
ゲーム性能は優秀

映像処理を【きれい】→【はやい】にすることで、遅延が低減されます。
| 設定 | 入力遅延@4k60Hz |
|---|---|
| きれい | 142.2ms |
| はやい | 19.2ms |
60Hzの速度は20msを切るので、ゲームプレイはかなり快適です。
120Hzや240Hzには基本的に対応していませんので、1フレームを争うFPSなどはゲーミング専用機を買うべきですが、それ以外は快適です。スイッチでスマブラをプレイしましたが、個人的には遅延は全然気になりませんでした。
ファンノイズは設定次第で静かにできる
映画モードにおけるファンノイズの実測値は以下の通り。
| レーザー出力 | ファンノイズ@1m |
|---|---|
| 100% | 37.8dB |
| 90% | 37.7dB |
| 80% | 37.5dB |
| 70% | 33.9dB |
| 60% | 33.5dB |
| 50% | 33.1dB |
レーザーの出力が80%以上では、ファンの音がなかなかしました。70%以下ではかなり静かになったので、明るさに問題がなければここまで下げて使うことを推奨します。
EPSONに期待する全てが詰まったハイエンドモデル

これまで5〜20万円クラスのEPSON製品を5台体験してきましたが、その中でも最高の感動を味わえました。個人的に1番差を感じたのは黒レベルで、3LCDでここまで深い黒が出るのかととても感心しました。映像の質感は、EPSON製品らしく、カラーが美しくエモーショナルな映像を投影します。
DLPの4K製品と比べると、映像のキレはやや控えめですが、腰を据えてじっくりと映像を「味わう」ような楽しみ方を望む人には本機は最高だと思います。
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