プロジェクターの実力を本当に見極めるには、単なるスペック表だけでは不十分です。各メーカーが決して語らない、色再現の精度や暗部の粘り、HDR処理の上手さまで丸裸にしてしまう、究極のテストディスクがSpears & Munsil Ultra HD Benchmarkです。
価格は記事執筆地点で、9900円でした。高品位なHDR映像からSDRの映像まで、圧巻の量のテストパターンで映像の調整と評価が可能で、私もプロジェクターのレビューで大いに活用しています。今回の記事ではこのディスクの概要と、個人的に気に入っているテストパターンをご紹介します。
ディスクは3枚構成

ディスク1:キャリブレーション用
- 基本のテストパターンが豊富に収録されている。輝度(ブラッククラッシュ・ホワイトクリップ)、ダイナミックレンジ、ガンマ(EOTF)、カラーチャート、色相や彩度、シャープネス、幾何学の歪みなどを細かくチェック可能。
- HDR(HDR10, HDR10+)、Dolby Vision といった多様な HDR 規格に対応。
- 解像度は Ultra HD(UHD)だけでなく HD 解像度向けのパターンも収録。
ディスク2:デモ映像
- 実際の映像を使ったデモンストレーション映像が中心。画質調整後に「実際のコンテンツでどう見えるか」を確認するのに最適。
- HDR フォーマットも多様に扱われており、Dolby Vision、HDR10+、HDR10 などに対応。
- カラースキームやピーク輝度の異なるデモ映像を収録。これにより「映像処理が適切に機器にリマップされているか(メタデータ処理など)」を確認可能。
ディスク3:SDRキャリブレーション
- ディスク1 にあるテストパターンの多くが SDR(スタンダードレンジ) フォーマットで収録されている。
- SDR 用と HDR 用で別々にキャリブレーションを行いたい場合に使える。
ディスク1or3で、プロジェクターの基本設定を調整。ディスク2のデモ映像で実際の映像の見え方を確認するというのが基本的な使い方になるでしょう。
再生には4K Ultra HD対応のBDプレイヤーが必要です。私はなるべく安く3Dも見れるUHDプレイヤーを探した結果、Panasonicの下記プレイヤーを使用しています。

デモ映像で総合的な映像評価ができる
まずDisc1は基本的なテストパターンを収録しています。
Brightnessではプロジェクターの黒レベルや明るさの項目を調整。下記写真はわかりやすいように、+4%から-4%まで見えている状態ですが、+2%までギリギリ見えて、0以下の黒は区別できない位が適切とされています。

コントラストでは、階調がどこまで潰れずに見えるか確認できます。

シャープネスは、線の輪郭が不自然にジャキジャキせず、カラーの境界にシュートが見えないような適切な設定を行いましょう。シャープネスは高いと不自然になることが多いので、基本は低めを推奨しています。

明るさの均一性を測るような映像もあり。

10bitのカラーグラーデーションのパターン。

横スクロールの文字と映像を組み合わせたパターンでは、動きのある映像をどれだけ正確に描写できているかを確認できます。また、DLPプロジェクターを使用している場合は、レインボーノイズの発生具合をチェックするのにも役立ちます。

女性がハンモックがゆっくり揺れる映像は、動きの途中でブレたり、カクついたり、ジャダーが出ないかを確認できます。また、MEMC(フレーム補完)の効果の確認にも適しています。

DIsc2では実際の映像サンプルを通して映像の見え方を確認できます。映像規格は、SDR、HDR、HDR10+、Dolby Visionから選択が可能です。
雪や雲のシーンは、HDRトーンマップの効果の確認に最適。細かい描写が潰れず塗り分けられているかが注目ポイントです。

カラーの鮮やかさや映像の精細感が試される花のアップ映像。

ブラックフロアの評価ができる黒い背景の映像などバリュエーションは豊富で、非常に多角的に画質の評価ができます。

プロジェクターの画質評価において、「肌の色が自然に表現できているか」は非常に重要です。スキントーンのパターンは、赤みや黄ばみなどの偏りがないかを確認するのに適しています。

HDR Analyzerでは、映像データの色情報と明るさ情報をリアルタイムで表示。右下の白黒映像は、P3色域を超える色表現の場合は赤色で表示されます。このようなシーンはプロジェクターの色表現力が試されるシーンであり、近年台頭している広色域の3色レーザープロジェクターは腕の見せ所となるでしょう。

Disc3はSDRの映像テストパターンとともに、AUDIOのテスト項目も注目。こちらはサラウンドスピーカーのイマーシブサウンドをテスト可能で、右上、左上など、仮想位置からどのように音が聞こえるかを確認できます。複数のスピーカーを使ったサラウンド環境はもちろんのこと、擬似的なサラウンドを再現するシアターバーなどの実力を確かめるのにも使えそうです。

テストパターンが豊富で非常に実用的
以上Spears & Munsil Ultra HD Benchmarkの紹介でした。今回は個人的に注目のテストパターンを紹介しましたが、実際はこの何十倍ものパターンがあります。SDRの映像に関しては、YouTubeなどでテストパターンが公開されていますが、HDRは安定した映像ソースがなかなかないので本品は非常に重宝しています。
プロジェクターの買い替えのタイミングなどでは、本ディスクを使って映像を確認すれば、違いが明確になって面白いと思います。プロも愛用する素晴らしいソフトなので、ぜひ興味のある人は使ってみてください。

